主要人物続き ・シピオン (勝地涼くん) カミュの手稿によると17歳。詩人であり、カリギュラの寵愛を受けています。カリギュラが狂いだす前には、本当に彼を尊敬し、愛していたようです。 が、カリギュラはだんだんと狂気の世界に入りだし、シピオンの父親を殺させます。それも、彼の目の前で舌を抜き、拷問のはてに・・・ 当然、シピオンはカリギュラを激しく憎むようになるのですが、それと同時に、カリギュラの苦悩、狂気を理解できる一面も持っていて、それがゆえにカリギュラはシピオンのことを寵愛しているのです。戯曲の中でも、セゾニアやエリコンとは違う、シピオンへの優しい(?)まなざしも感じられ(でも狂気じみてますが)、彼自身も、シピオンとは心が通いあっていることを感じている様子。 今から蜷川さんがどんな演出で、そして旬くんがどんな風に台詞を言うのか、楽しみで仕方ないのですが、こんなシーンが戯曲の中であります。 カリギュラはシピオンと心を通いあわすシーン。 ☆☆ カリギュラは腰をおろし、シピオンを見つめ、それから荒々しく彼の手をとって、力づくで自分の足元に引き寄せる。シピオンの顔を両手にはさんで カリギュラ: お前の詩を読んで聞かせてくれ 若いシピオン: それだけはお許しください、陛下。 カリギュラ: なぜだ? 若いシピオン: 今、持ってきておりませんので。 (中略) カリギュラ:そんなことを言わずに・・・ シピオン : ぼくはその詩で、ある種の調和を歌ったのです、大地と・・・ カリギュラ: (何かの想いに憑かれたような口調で、それをさえぎり)・・・大地と人間の足との。 シピオン: (驚き、ためらい、そして続ける) そうです。大体そういうことです・・・ カリギュラ: それから? シピオン :・・・・それから、ローマの丘の連なりと、夕暮れになると訪れてくる、移ろいやすく、また心ときめくあの安らぎと・・・ カリギュラ: ・・・緑色の空を行く、あの雨燕(アマツバメ)たちの泣き声と シピオン: (さらに夢見心地に)そう、そうです。 カリギュラ: それから? シピオン: それから、まだ一面金色の空がたちまち揺れて、一瞬のうちに、光輝く星々に満ち溢れたもう1つの面(おもて)を見せてくれるときの、あの微妙な瞬間。 カリギュラ : そのとき、大地から夜の闇へと立ち上る、煙と樹々と水の流れのあの香り。 シピオン: (すっかり陶酔に身をゆだねて)・・・・あの夕蝉の鳴く声と、立ち返る夕暮れの冷気、犬の吠え声、まばらになった馬車の音、農夫たちの声・・・ カリギュラ: ・・・乳香樹とオリーブの林の中、闇にすわれて行くあの小径・・・ シピオン: そうだ、そうなんだ。そのとおりです!でも、どうしてご存知なのです? カリギュラ: (シピオンを抱きしめて)おれにはわからない。それはきっとおれたち二人が、同じ真実を愛しているからだろう。 シピオン: (ふるえながらカリギュラの胸に顔を埋めて) ああ!どうだっていい、すべてが僕の中で愛の姿に変わってしまったのだもの! カリギュラ: (相変わらず愛撫を続けて) それは偉大な心の持つ美徳なのだよ、シピオン。ああ、せめてこのおれに、お前のような透明な心を持つことが出来たらな! だが、俺は知りすぎるほど知っている、人生に対するおれの情熱の激しい力を。そいつは自然などでは満足しないのだ。お前にわかることではない。お前は別の世界の人間だ。 お前は善のなかで純粋なのだよ、ちょうど俺が悪のなかで純粋なようにな。 ☆☆ その後も良いせりふ続きますよ~でも疲れたし長いので中略。結局、心を通い合わせたのも束の間、ふたりの考えは平行線のまま、議論は終わろうとしています・・・・ ☆☆ 彼(カリギュラ)はすっかりつかれきった様子だ。長い沈黙 若いシピオンはカリギュラの後ろをまわって、ためらいながら近づく。 彼は片手をカリギュラのほうに差し延べ、その肩の上におく。 カリギュラは振り向かずに、その手の上に、自分の片方の手を重ねる。 若いシピオン : 人生には優しい慰めになるものが何かあるのです、誰にとっても。生きていくためにはそれが助けになるのです。疲れきってどうにもならないとき、みんなそのほうに振り向くような優しい慰めが。 カリギュラ : そのとおりだシピオン 若いシピオン :あなたの人生にはそういうものはないと言うのですか、涙が溢れそうになることとか、静かな隠れ家とか? カリギュラ : いや、あるにはあるな。 若いシピオン : じゃ、なんです、それは? カリギュラ : (ゆっくりと) 軽蔑さ ☆若いシピオンも、シピオンも同一人物です。せりふの役名はは、だいたい「若いシピオン」と書いてありますが。 ・ケレア (長谷川さん) カミュの手稿によると「30歳」 カリギュラも一目おく、文官の貴族。貴族側の立場につき、カリギュラと対立する側の人間であるが、他の貴族のように、自分自身の保身のみを考えるわけではなく、自身の論理と照らしあわせて、カリギュラの押し進める不条理の論理がどうしても相容れないものとして、カリギュラの謀殺の首謀者となる。 ケレアとカリギュラとの対峙シーンは、戯曲の中でも非情に重要なシーンと思われます。カリギュラが単なる狂気の皇帝でないことが、このシーンからうかがいしれました。 ☆☆ カリギュラ: ケレア、なぜお前はおれを愛さないのだ。 ケレア : なぜなら、あなたには愛すべきところが1つもないからです、カイユス様。こういったことは、したいからといってできるものではありませんしな。それにもう一つ、私にはあなたという人があまりにもよくわかってしまう。自分でも隠そうとしている自分の顔、その顔と同じ顔をしたもう一人の人間を愛することは出来ませんからな。 カリギュラ: なぜおれを憎む? ケレア: それはあなたの思い違いですな、カイユス様。私はあなたを憎んではおりません。確かに、あなたは有害で残酷、エゴイストでうぬぼれきった人だとは思います。しかし、私にはあなたを憎むことはできない、なぜなら、私にはあなたが幸せだとは思えないからです。また、あなたを軽蔑することもできません、私はあなたが卑怯者でないことは承知しております。 カリギュラ: それなら、なぜおれを殺そうというのだ。 ケレア: 申し上げたでしょう、私はあなたを有害な人物だと考えるのです。私は安全であることを愛し、かつ求めます。大部分の人間は私と同じなのです。夜にも奇怪な思想が、突然現実の中に侵入してくるような世界・・・しかもそれが往々にして、心臓に匕首(あいくち)を突き立てるように襲ってくる、そんな世界には、大部分の人間は生きることができないのです。私だって同じことで、生きるのにそんな世界はごめんです。自分の手綱は自分で握っていたいと思います。 中略 カリギュラ: お前にはものがよくわかる、そしてその知性というやつは、みずからのために高い代償を支払うか、みずからを否定するか、どちらしかないのだ。おれは支払っている。 ところがお前は知性を否定もせず、まだ代償を払おうともしない、なぜだ? ケレア: なぜなら私は生きたいから、幸せになりたいからです。ただひたすら不条理というのもの押し進め、その結末のことごとくを知るというやり方では、そのいずれにもなりえぬと思います。 私は世間並みの人間なのです。そういう自分から解放された気持ちを味わうために、私だって、じぶんが 現に愛している連中の死を望み、血縁とか友情とかの掟によって慕うことの許されない女を手に入れたいと思うこともあります。 論理的であろうとするなら、私は殺すか、所有するかしなければならないはずです。しかし私は、こうした漠然たる空想は取るに足らぬものと考えるのです。もしあらゆる人間がこうした空想を実現したいなどと言い出したら、それこそ我々は生きることも幸せになることもできなくなります。 繰り返して申しますが、私にとって重要なのはこの点だけです ~中略 クーデターの証拠である板を、カリギュラに見せ付けられる。カリギュラはケレアを断罪しないばかりか、その要の証拠の板をケレアの目の前で松明にかざして燃やしてしまう。 ~ ☆☆ カリギュラ : どうだ、陰謀家!こいつは溶けていく、そしてこの証拠が消えていくにしたがって、お前の顔には潔白の朝の光が射してくる。なんという素晴らしい清らかな額なのだ、ケレア。美しいものだ、罪のない人間とは、実に美しいではないか! 讃えるがいい、俺の力を。神々ですら、罰を与えた後でなければ人間を潔白にすることは出来ぬというのに。ところがお前の皇帝は、お前を許し、お前に勇気を与えるのに、一本の松明で足りるのだ。続けるがよい、ケレア、最後までやりとおすのだ、お前が今主張したあの見事な論法を。お前の皇帝は休息を求めている。これが彼独自の生き方なのだ、彼独自の幸せになる方法なのだ。 ケレアは唖然としてカリギュラを見つめる。彼は何か仕草をしかけ、あたかも理解できたように口を開くが、そのまま急いで退場する。カリギュラは炎の中に例の板をかざしたま、微笑を浮かべて、目でケレアを追う ~幕~ はあ~長かった~(ToT) 主要人物、カリギュラ、セゾニア、エリコン、シピオン、ケレアの説明をしようと思うと、やはり劇中のせりふが一番、かれらの考えなどを表しているので、私のつたない文章なんかより、カミュの書いた台詞を書こう、途中から台詞を主体に書きました。 次回は、ストーリーの概要を書きたいと思います。アップは・・・深夜かな?
by pukapuyajiri
| 2007-08-14 14:55
| カリギュラ
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