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カミュ原作 「カリギュラ」あらすじ 第一幕

いよいよ、カリギュラの公開も目前にせまりました。8月9月と、カリギュラの原作あらすじを記事にしていましたが、途中から完全に原文転記になってしまい、著作権法にも触れるということで非公開にしていましたが、このたび、やっとあらすじをまた、まとめなおす気になりました。

今度は、本当にストーリー重視の、簡略バージョン。原作のなんともいえぬ魅力はやはり原作を読むしかないと思うのですが、舞台を前に、ざっとした展開を頭に入れておきたい・・・という方むけのあらすじになってるかと。もっともっと原作の世界観を知りたい方は、図書館や古本屋等で、ぜひ読んでみてください。入り口さえ見つかれば、魅惑の世界に足を踏み入れることになると思います♪

ではでは本当に簡単にですが第一幕をまとめてみました。興味のある方は、読んでくださいね~


                        ★★★★★★

                第一幕     ~カリギュラの失踪と変貌~


宮殿の一室に貴族たちが集まっている。みながひどくいらだっているのは明白。話題は、ふいっといなくなって3日もたつローマ皇帝カリギュラについてである。

そんな中、皇帝の腹心の部下エリコンが玉ねぎをかじりながら登場。エリコンと貴族たちは、皇帝がいなくなった理由を話し合う。やはり愛する妹ドリュジラが亡くなったの原因だろうと推測する貴族たち。途中で加わった、近衛隊長のケレアも加わって、近親相姦の関係だけでもスキャンダラスなのに、妹の死亡で失踪するだなんて、なんてことだ、と嘆く貴族に、本当に失踪の理由はそれなのかな?と意味深な言葉を残すエリコン。

詩人のシピオンも皇帝の失踪に心を痛める中、ケレアと貴族が、このまま失踪なら、皇帝をかえるしかないな、という話に。それを聞いて、気を悪くしてその場を出て行くシピオン。


場面は変わり、錯乱した様子で、衣服は汚れ、髪はびっしょり濡れて、足も泥だらけの皇帝カリギュラが姿をあらわす。普通の様子ではないが、鏡に自分が映っているのを見ると、鏡に近づき、立ち止まる。その後、疲れた様子で、口ではもごもご何かを言っていすに座るカリギュラ。そこでエリコンがカリギュラを発見する。大騒ぎすることなく、じっとカリギュラを見つめるエリコンに、カリギュラは自ら声をかける。

いつものように落ち着いて、「こんにちわ、カイユス(カリギュラの本名)」と声をかけるエリコンに、カリギュラは自分がとあるものを探し求めるために、失踪していたことを明かす。

探していたものは何か?とたずねるエリコンにカリギュラは「月がほしかったから、それを探しに行っていた」と伝える。 そして、その探し物に若干のとまどいをみせるエリコンに、カリギュラは自分はドリュジラが死んだから気が狂ったわけではない、あくまでドリュジラの死がきっかけでとある真理に気づき、その真理を求めると月が必要なのだ、と答える。

皇帝はやはり疲れておかしくなったのか・・・と思ったのか、エリコンはとにかく休む(寝る)ことをすすめるが、カリギュラはそれを拒否。「おれが寝てしまったら、誰がおれに月をくれるのだ?」と答える。そして、エリコンに月を手に入れるために協力してくれるように頼む。それを了承するエリコン。


場面はかわり、カリギュラの愛人セゾニアと詩人シピオンがカリギュラを探している。ふたりは、やはりドリュジラの死が彼を失踪まで追い込んだのだろう・・と推測している。シピオンはカリギュラを愛しているのだと、セゾニアに伝え、セゾニアもまた、自分がカリギュラの気を引くにはおばあさんになったと自ら卑下しつつも、ふたりでカリギュラの帰還を待ち望んでいる。

そこへカリギュラが登場。セゾニアとシピオンに気づいて、会うことをためらい、後ずさりするものの、後ろから貴族たちと財務長官が来たことにも気づいて、仕方なくみなと対峙(たいじ)することに決める。


「陛下を探しておりました・・」と伝える財務長官。それに対し、「用はなんだ!」と荒々しく聞くカリギュラに恐れをなして、財務長官はその場しのぎの思いつきで、国家の財政について聞きたいことがあったから探していたのだ、と答えてしまう。

それを聞いて、自分の失踪より、国家の財政か!確かに大事だな!と高笑いするカリギュラ。

そして、その国家の経済絵をあっといまに壊滅させてしまう、すばらしい方法を説明してやろう!と、貴族たちをさがらせ、財務長官とセゾニアに新しい政策を説明する。それは、遺言状に介入して、遺産は国家が受け取ることにする、というもの。そして、その遺産を手に入れるべく、遺言状をかいたものは、任意に定めたリストに従って、殺していく、というシナリオを説明する。

あまりの恐ろしい提案に、驚愕動転の財務長官とセゾニア。カリギュラの言い分は、国庫=金が大事ということは、命は重要でないということ。論理的であろうとするなら、命は大事でないということを実行すれば、金が大事ということになるのだと。


セゾニアもシピオンも、あまりのカリギュラの変貌ぶりに、冗談なのでしょう?と詰め寄る。シピオンは、そんなことは不可能だ!といいますが、カリギュラはそのとおりだ、不可能を可能にするのが目的なのだ、と伝える。

「おれは初めて、権力というものの効用がわかったよ。権力は不可能なことに実現のチャンスを与える。今日を境に、わが自由にもはや限界はない!」

不可能を可能にするための自由と権力を行使することを宣言するカリギュラ。

そこにケレア登場。丁寧なあいさつの後、やんわりとカリギュラの暴挙とも言える政策に苦言を呈する様子をみせるケレア。しかしカリギュラはそれを拒否。

「この世界はくだらぬもの。そしてそれが分かった人間が自由を獲得する。このローマ帝国で自由なのはこのおれ一人。お前たちに自由というものを教えてくれる皇帝があらわれたことを喜べ!そして、ローマの自由は今かなえられ、その自由とともに大いなる試練が始まることを、みなに告げよ!」とケレアに伝え、ケレアはその場をさがる。


「泣いているの?」
セゾニアが声をかけると、カリギュラは自分が泣いていたことを認める。ドリュジラが死んだからって、そんなにショックを受けることないじゃない・・・となぐさめるセゾニアに、カリギュラは

「馬鹿な!誰がドリュジラのことを言っている。お前には考えられないのか、男はな、恋のためばかりに涙を流すわけではないと?」 と応える。そして、なぐさめようとするセゾニアにほっておいてくれと言いつつ、やはりそばにいてくれと頼む。

嘆き悲しむカリギュラをなぐさめるセゾニアに、自分の内面のどうしようもないほどの絶望を伝えるカリギュラ。

「ああ、セゾニア、おれは人間が絶望することもあるとは知っていた、だがおれはこの言葉の意味することを知らなかったのだ。おれは、他のやつらと同じように考えていた、それは(絶望とは)魂の病気だと。
 ちがう、苦しんでいるのは肉体なのだ。おれの皮膚が痛む、おれの胸が、おれの手足が。おれの頭の中はうつろなのに、おれの心臓が突き上げられる。いや、一番我慢のならんのは、口の中のこの味だ。血でもない、死でもない、熱でもない、それが全部一つになった味だ。おれが舌を動かしただけで、すべてが真っ黒になり、人間どもは見るもおぞましい姿に変わる。
 ひとりの男になるとは、こんなに辛く、苦しいことなのか!」


独白する皇帝に、とにかくぐっすりと眠って、目を覚ませばその肉体の苦しみも和らぐだろうから、と助言するセゾニア。

「眠らなくちゃ駄目よ。ぐっすり眠るの。身をまかせきって、何も考えては駄目。私があなたの眠りを見張っていてあげる」

それを否定するカリギュラ。眠ることとは、すべてを任せてしまうということ、そんなことをしていると、権力をもった意味がない、と言うカリギュラ。

「そうとも、しっかりとした力などおれにとって何になる。万物のありようを変えることができないのなら、太陽を東に沈ませ、苦しみを減らし、人を不死にする、それができないのなら、驚くべきこの権力がなんになる。 そうなのだ、セゾニア、おれにこの世界の秩序を変える力がないならば、眠っていようが、起きていようが同じことだ。」

それは神の仕事であって、そんなことを人間がしようとするなんて無理よ!と応えるセゾニアに

「では神とはいったい何者なのだ?今日、おれがおれのすべての力を挙げて望んでいるものは、神々などよりさらに上に位するものだ。おれは一つの王国をひきうけた、そこでは不可能なことが王なのだ」

と、自らが神より上を目指していることを宣言する。

「いくらあなたが望んでも、天を天でなくすることはできない、美しい顔を醜くすることも、人間の心を無感動にすることもできません」


「おれは天を海にぶちこみ、美と醜を混ぜあわし、苦しみのなかから笑いを湧きおこさせてやる」

「この世には善いことと悪いことが、偉大なものと低級なものとが、正しいことと不正なこととがあるのよ。誓って言うわ、そういう全てが変わるはずはないのよ」

「俺の意思は、それを変えることだ。おれはこの時代に、平等という贈り物をしてやる。そして、すべてがまったいらになったとき、はじめて不可能が地上に存在し、月が俺の手に入る、そのときにこそ、恐らく、この俺自身というものが変わり、世界もおれと一緒に変わる、そうなって初めて、人間たちは死なずにすみ、幸せになるのだ。」

セゾニア (叫ぶ)「あなただって愛を否定することはできない!」

カリギュラ  (逆上し、怒りに燃える声で)

「愛だと、セゾニア! (彼女の肩をつかんで、ゆすぶる)
 俺は知ったのだ、そんなものは取るに足らんと。正しいのはあいつだ、国庫の財政だ!お前もはっきり聞いたはずだ。全てはそこから始まる。ああ、ついに今こそ、おれは初めて生きるのだ! セゾニア、生きるとはな、愛することの反対なのだ。このおれがそれをお前に宣告する、このおれが、お前を招待してやる、果てしのない饗宴に、何人も容赦せぬ一大裁判に、もっとも見事な見世物にな。 そのためには人がいる、見物人が、生贄が、罪人どもがおれには必要なのだ」

彼は跳ぶ様にして、銅鑼(どら)に駆けより、はてしまなく、立て続けにそれを打ち鳴らす。銅鑼をうちながら、罪人どもを呼び寄せるように叫び、セゾニアに伝える

「奴らに見せてやる、やつらがかつて見たことのないものを、この帝国でたった一人、自由な人間の姿を!」  と。

銅鑼の音につれ、宮殿はしだいにざわめきに満ち、それらの物音は高まり、近づいてくる。人間、武器の音、入り乱れた足音、歩調をあわせた衛兵の足音などである。

銅鑼をたたきながら、次第に錯乱の態になってきているカリギュラは、セゾニアに、自分の言いなりになって、自分を助け、残酷で非情で冷酷な女になるように命じる。セゾニアもそれを受け入れる。

狼狽した貴族や、宮殿のものたちが現れる。カリギュラは最後の一打ちを鳴らし終わると、その槌を高々とかかげ、かれらのほうへ向き直り、狂気したように叫ぶ

「みんな来い。もっと近くへ。皇帝が貴様らに近う寄れと命じているのだぞ!  (一同、恐怖にとらえられたまま、前へ進む)  遅い!さあ、おまえも、セゾニア、こっちへ来い」

彼女の手をとり、鏡のところへ連れて行き、それから磨かれた鏡にうつった姿を、槌で狂おしく消す。カリギュラは笑いながらみなに告げる。

「どうだ、もう何も残ってはいない。思い出はなくなった、顔という顔は消え去った!ない、もう何もない。そのあとに残ったもの、お前には分かるか、それが何か? もっと近くに来い。しっかりと見ろ。貴様らも来い。さあ見るがいい」

彼は鏡いっぱいに、狂人のごとく立ちはだかる

セゾニアは慄然として呼びかける。

「カリギュラ!」

カリギュラは調子を変え、鏡の表に一本の指をあてがい、突然その眼差しを据えて、勝ち誇った声で言う。

「カリギュラだ!」




                 ★★★★  第一幕終了  ★★★★
by pukapuyajiri | 2007-11-05 00:32 | カリギュラ
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