カミュ原作 「カリギュラ」あらすじ 第四幕  ~下~

彼はそのままの位置でぐるっと一回りし、形相も物凄く、鏡のほうへ行く。そして、鏡の中の自分に告げる

「カリギュラよ!貴様だってやっぱり罪があるのだ。それなら、少し多いか少ないか、しょせんは程度の差ではないか!だが、裁き手のいないこの世界で、誰一人罪のない人間はいないこの世界で、いったい誰がこのおれを罰するというのだ!

(力いっぱいに悲痛な口調で、鏡に体を押し付けながら)

なあ、お前、エリコンはとうとう帰ってこなかった。月はもう手に入るまいよ。なんと辛いことだ、自分の考えが正しくて、しかもその必然的な結果に行き着くまで、やりとおさねばならぬとは。
そうなのだ、おれが怖れているのはその結末に行き着いてしまうということ。
武器の音がする!罪のないやつらが勝利の準備をしているのだ。どうしてやつらの代わりにこのおれではいけないのか!

俺は怖ろしい。ええ、糞いまいましい、他のやつらを軽蔑し続けた挙句、今になってやつらと同じ、卑怯な心を抱くとは。だが、これもなんということはない。恐怖もまた、長続きはしないからな。おれは再び見出すのだ、心の静まるあの巨大な空虚を」

彼は少し後ずさりし、また鏡のほうに近づく。前より落ち着いた様子である。彼は再び語りだすが、その声は前より低く、一語一語、噛みしめるような口調だ。

カリギュラ
「すべてはひどく複雑に見える。ところが実は、すべて、しごく単純なのだ。
もしおれが月を手に入れていたら、愛だけで十分だったなら、すべては変わっていただろう。
だが、どこで癒せというのだ、この心の渇きを?どんな心が、どんな神が、おれにとって湖のような深さをたたえているのだ?

(膝まづいて泣きながら)

この世にも、あの世にも、おれの力に匹敵するのものは何もない。だが、おれは知っている、そうだ、お前も知っているはずだ・・・(と泣きながら手を鏡のほうへ延ばし)・・・ただ不可能なことが可能になればそれで十分だということを。

不可能なこと!それをおれは世界の果てまで、このおれの内側のすみずみまで探し求めた。
おれは両の手をさしのべた、 (絶叫して) 今もこうしてさしのべている!ところが、おれが出会うのは貴様だ、いつでもきまって貴様なのだ、俺の前に立ちはだかるのは。おれは、貴様に対する激しい憎悪に燃えている。おれは進むべき道を進まなかった、おれはどこにも行き着かない、おれの自由は呪わしい自由だ。

エリコンよ!ない!まだ何もない!ああ、この夜は重く苦しい!エリコンは帰ってくるまい。おれたちは永劫に罪を背負うのだ!この夜の重さは、人間の苦悩と同じだ。」

武器の音と、ささやき交わす声が舞台裏から聞こえてくる。エリコンが突如、舞台奥に姿を見せて叫ぶ!

「ご用心を、カイユス様! ご用心のほどを!」

目に見えぬ手がエリコンを刺殺する。カリギュラは立ち上がり、片手に低い椅子をつかみ、息遣いも荒く、鏡に近づく。おのれの姿を見つめ、前へ跳びかかる様な格好をし、鏡に映った自分の分身が自分と寸分たがわず動くのをみて、わめき声をあげながら、力いっぱい椅子を鏡に投げつける

カリギュラ
「歴史に入るのだ、カリギュラ、歴史に!」


鏡は砕け散り、それと同時に、入り口という入り口から、武装した叛徒たちがなだれ込む。

カリギュラは狂気したように笑いながら、彼らと向きあう。

かの老貴族は背面から、ケレアはまっこうから、カリギュラに切りつける

カリギュラの笑いはひきつけるような、断末魔の喘ぎに変わる。

一同、てんでに切りつける。

最後の息をつぐとき、カリギュラは笑いながら喉を鳴らし、そして絶叫する


「おれはまだ生きている!」


                   ★★★★   閉幕   ★★★★



いよいよ明日にせまった、アルベール・カミュ原作の戯曲「カリギュラ」の舞台。蜷川幸雄の演出のみならず、小栗旬、勝地涼、長谷川博己、横田栄治といった役者陣、その他スタッフの方々の魂のこもった舞台となると、確信しております。

シアターガイドや、その他の雑誌の写真を見るたびに、カリギュラへの期待がふくらみ、そしてこの絶望する皇帝の気持ちが手に取るようにわかってしまう、今の旬君の状態を若干憂いつつも、期待に胸が高まっています!

明日の初日がつつがなく始まり、そして、みなが恐らくなんともいえぬ衝撃と感動をうけて帰路に着くこととなるのでしょうね。初日に観劇されたかた、ネタバレしない程度に、コメントくださると嬉しいです。

夏休みから、カリギュラの下調べをすすめ、ようやくここで終了宣言、といったとこでしょうか。ローマ人の物語を参考文献とした、史実のカリギュラ像についての記事もあるので、興味のあるかたはご参考までに。 カテゴリーでカリギュラ、を押していただけると、ば~っとカリギュラ関連の記事がでてきます。

あ~!本当に楽しみです!カリギュラに会える日が待ち遠しい・・・・♪
[PR]
by pukapuyajiri | 2007-11-06 11:26 | カリギュラ
<< ぬなな! カミュ原作 「カリギュラ」あら... >>